1月25火)

NO,178(重心距離の大切さは どうなの?

 


 
ある年からゴルフ業界、パーツ販売各社の御題目は重心の位置、それは“重心距離”を盛んに訴え 打ち易さを誇る「慣性モーメントの数値比較」を筆頭にしたクラブ評論が多くありました 今でもウッドヘッドのフェース素材や体積以外にヘッド構造上の数値比較、解説には必ず、と言って良いほど登場するのが「重心距離」ではないでしょうか? 当店にも質問される事柄で
「重心距離は短い方が良いですか?」
「重心距離をアイアン、ウッドとも あわせるべきですネ?」
「測定データでは重心距離が どうで・こうで・ああで・・・」
と聞かれたりして 皆さん方が誌上でもっともらしくクラブ評論家がああ言えば そうだと納得されるカラクリに直面されている気配をヒシヒシ感じます そんな物ではない事、もっと大切な事を 私は以前から考えていたのですが この「本当の重心距離とは?」を今回 店主の見解を日報ノートで記してみようと思います
皆さんが写真でよく御覧になる「重心距離」は 
写真−1の様にA点とB点の距離だと解説された絵ではないでしょうか? これは写真−2でマーキングされるA点が “ヘッドのフェース面が細い芯の上で釣り合う”写真−3、4からの実験でマーキングされる位置が考えられます

写真−1

写真−2

写真−3

写真−4

ところが実際はマーキングされたA点は フェースの一元面上の点であって 本当はヘッドの重心は「三次元の空間中にあるもの」だと考えなければなりません 簡単に測れる位置関係がフェース面上の点であれば 写真−5のようにソールで釣り合う点を計測するには難しい為 またアイアンではソール面上で釣り合う事が稀で少ない為 便宜上だけでウッドヘッドのみのシャフト軸線からフェース一元面からだけの均衡点、しかも平面上の最短距離を“重心距離”と言うべきでは無いのが正論の筈です
以前ご紹介した ただ今当店店主が試作中の“ラテラルバランス測定器”が示唆するように クラブの状態ではヘッド単体で計測した一元面上の位置から重心位置は当然ずれて考えられます
少なくともヘッド単体のフェース面上の位置からずれる根拠に 先ずヘッドにはシャフトのティップ側(先端)が装着され ヘッドの反対側のシャフトバット側(お尻)に重さが相応あるグリップが装着され そのシャフトやグリップの装着されようによって(シャフト軸線とヘッドのシャフト孔への挿入角度のずれ、スペーサーの使用など) またシャフト先端へのバランス調整の為の異物、アジャスト鉛の混入 ヘッド内部へのグルー材や発砲材でバランス充填 シャフト自体のバランスポイントの独自性など・・・ 

写真−5

写真−6

写真−7

「写真から想像しても シャフト軸線がずれるとライ角度、リアルロフトが変わり・・・ 先端が重い(軽い)シャフトではヘッド側(グリップ側)が重いので・・・ シャフト先端部分に混入された異物、アジャスターの為軸線上先端部分が重くなり・・・ グリップの重量が重い(軽い)為 さまざまな影響が考えられ重心の移動が現れます」

で ラテラルバランス計で計測される数値が無垢な状態から 考えられる上記のさまざまなファクターで 先程のフェース一元面上のA点からはずれるのです ラテラルバランス計では X方向のフェース面側から照射した赤色のレーザー線と 90度回転したY方向のトゥ側から照射した赤色のレーザー線が 垂直面上のZ方向から見てクロスする(交わる点)と 写真−8参照 Z方向直下のソール方向から延伸したクロス点のどこかに三次元内で重心が存在する事が確認できます(試作、設計中ですが 確認できる予定です) 写真−9参照

写真−8

写真−9

本来は重心の高さ(ソールからの重心点の距離が 重心の高さと呼ばれる)や 重心の深度(重心点とフェース面から垂直に伸ばした交点までの距離)を考えないといけないのが「重心点」であり 写真−2でマーキングした点Aは ネックにアジャスト鉛の数グラム、例えばアイアンでも ネックに10g程の鉛棒をくっ付けても マークされる点は数ミリと移動しません(実際に鉛棒をネックに付け 写真−3様にテストする) ところがシャフトのバット側端を持ち ボールを手でコンコン打ち突けると(実際のゴルフプレイでは 当然シャフト末端のグリップを持ち打球する事を考えると)とんでもなくパーカッションエリアが内側に移動する事が確認できます
写真−10、写真−11、写真−12、は ウッドヘッドのカットサンプルによる“自家製3D写真”です 白く見えるのは割り箸の先に赤いペイントを付けています

写真−10

写真−11

写真−12

写真−10はソールからの重心の高さを想定し シャフト軸線(点線)に向かい鉛直面で直角に交差する距離を実線で示しています
写真−11はフェース面からの重心の深度を想定し シャフト軸線(点線)に向かい鉛直面で直角に交差する距離を実線で示しています
写真−12はヘッドを斜視した状態であり 一元面のフェース面上の重心位置 写真−1とは明らかにその間の距離が違い 立体的な見方からすれば さまざまなシャフトが、さまざまな技法で装着され またバランサーの量や位置で三次元上の重心点の位置は ヘッドのみで たかがフェース一元面上の位置(距離)を 取り立ててワイワイ言うほどではない事が お解かり頂けたと思います ウッドヘッド内部の何処か一点が重心の位置である以上 組み上げられたクラブの状態でその深度や高さがさまざまですから 平面上の一点で距離の大小なく捉えるべき筈です
いつも申しますようにクラブヘッドを持ってボールを打ちません クラブの性能、品質を決定するのは組み立てに係わる技法、技術です いくら素晴らしい計測値が備わった名匠のヘッドでも、最新型のフェース素材や構造のヘッドでも 付いているシャフトで、付け方で見た目や表立った計測値だけでは中身まで判断できません 一過性の短絡的に間違った安心感を消費者に与えないと小手先では売れない業界も困ったものですが・・・